タイトルは「京都府地域包括ケア構想」
医療・介護総合確保推進法に基づき、すべての都道府県が策定を義務づけられている「地域医療構想」(医療計画の一部)。2016年度中にはすべての都道府県で策定が完了する見通しです。
さて、ご当地・京都府ではおもしろいことになっています。
京都府は11月30日の「京都府医療審議会地域医療構想策定部会」で、地域医療構想の中間案を示しました。既に、府は11月に各二次医療圏の「地域医療構想調整会議」で構成案を示していましたが、このほど初めて全体像が出されたのです。策定部会での意見も踏まえ、先に開会したばかりの京都府議会12月定例会で正式に報告されました。
京都府の地域医療構想中間案は、「京都府地域包括ケア構想」との題名がつけられました。
府は、早い段階から、地域の医療関係者が「地域医療構想とは病床削減の計画なのではないか」との懸念や批判(国のねらいにそうした面があることは事実なのですが )に対し、病床削減をめざすものではないと態度表明していました。また、京都府は「京都式地域包括ケア」を提唱し、京都市等と共に「京都地域包括ケア推進機構」を創設しており、今回の題名もそれらの経緯を踏まえたものと考えられるでしょう。
地域医療構想は、すべての都道府県のすべての二次医療圏(制度上は「構想区域」と言います)の2025年の「必要病床数」を、レセプトデータの実績値に基づいてはじき出した「機能別の医療需要」(高度急性期・急性期・回復期・慢性期)別に、あらかじめ定め、構想策定年限の2018年度から、その実現に向けて都道府県にリーダーシップを発揮させようという仕組みです。同時に市町村国保が都道府県単位となり、「医療費支出目標」を盛り込んだ「都道府県医療費適正化計画」を策定させることから明らかなように、国のねらいは都道府県による医療費抑制策の本格化に他なりません。
病床数推計のためのツールは、国があらかじめ示した「ガイドライン」で示されたものを用いるため、全国統一の基準で、一斉に病床数削減を伴う推計値が設定されます。
しかし、示された京都府の中間案は注目すべき特徴を持っていました。
(1)病床削減の目標値にはなっていないこと
府推計は、16年5月1日現在の許可病床数29,690床に対し、25年の病床数を29,957床(プラス267床)としました。
(2)二次医療圏の数字には「機能別必要病床数」を書き込まない方針であること
病床数については、国推計との比較では減らす地域もありますが(京都・乙訓、山城北)、許可病床数との比較ではすべての医療圏で維持。山城北・南では増床と推計していいます。国の示した2025年の必要病床数推計も29,957床ですが、地域での調整会議でつかんだ状況や現場の声を受け止め、その範囲の中とはいえ、今よりも病床数を減らすことが避けられました(一覧表を12月10日発行の京都保険医新聞一面で紹介。ご一読ください)。
なおかつ、機能別病床数を書き込まないことについては、トップダウンで行政側が決めるべきものではない、との姿勢を示したものといえるでしょう。早速、京都府議会でも地域医療構想は話題にあがり、山田知事は議員さんの質問に対して「こういうことは柔軟に対応すべきで、ガチガチに決めるものではない」との考えを示されたようです。
他府県の構想の多くが国の推計値と変わらない推計を示していることを考えると、府の姿勢は一定評価すべきものではないでしょうか。しかしながら、中間案に示された在宅医療の需要は現在よりプラス18,195の39,979(人/日)とされ、地域で入院も在宅も必要に応じて保障される体制づくりには様々な課題がありそうです。
今後、中間案は議会での審議を踏まえ、パブリックコメントに付される予定です。
協会ももちろん、パブリックコメントを提出するつもりですが、会員のみなさま、開業医・病院の医師、それぞれの立場から、府に意見を届ける必要があると考えています。